ナチュラル志向が継続する一方で、ハイテクや機能性を感じさせるテキスタイルに熱視線が注がれている。多くの企業が企画の一つに打ち出したのが、スポーツミックス。スポーツ要素の取り入れ方は様々だが、いずれもフェミニンをベースにしている。吸水速乾、汗染み防止、UV(紫外線)カットなど機能素材も活用し、美しさと快適性の両方をかなえる。
女らしくこなす
トレンドに浮上して久しいテイストミックスは、16~17年秋冬のデザイナーコレクションで“コラージュ”“パッチワーク”と表現されるように一段と重層的になっているが、日本では、ベーシックな素材を基本にしたスポーツミックスが隆盛を極めそうだ。スポーツテイストの強いアスレジャーというより、ハイテク感のある素材をフェミニンなスタイルに落とし込むのが大勢。カジュアルでも、優しい色使いや柔らかな風合い、センシュアルな透け感あるテキスタイルで女らしくこなす向きが強い。久しぶりに回帰しそうな光沢は、この企画で活躍しそうだ。
スタイレムは、アスレジャーのトレンドを意識し、糸軸や後加工で光沢を出した化合繊で、スポーティーなムードを提案する。ポリエステル100%のベーシックな素材には、全面に銀や銅の箔加工を施し、強い光沢をまとわせた。金属のような硬質な印象とドレープ性を併せ持ち、プリーツ加工との複合も可能。糸軸では、キュプラやトリアセテート、化合繊のモノフィラメントを駆使。トリアセテートと細番手の超長綿を混紡して、高密度に織り上げた二重織りは、光沢感や柔らかさに加え、適度な膨らみも持ちアウターに向く。キュプラは撚糸を強めにかけ、キュプラ本来の接触冷感を一段と高めた。ポリウレタン混でストレッチ性もあり、着心地を訴求する。
瀧定名古屋の春向けは、フェミニンにスポーティーな要素を加えたテキスタイルがいっぱい。アウター用途は、ブルーやイエロー、赤と華やかな色で彩った。タイプライターのような高密度ジャージー、ビンテージの雰囲気を醸し出すナイロンタフタなどハリ・コシある素材をスポーツパーカやトレンチコート向けに打ち出した。
機能素材に広がり
商社でも、スポーツミックスの提案が目立った。商社のOEM(相手先ブランドによる生産)は、独自に調達、開発した素材を切り口にした差別化競争が激化。外観だけでなく独自素材を中心とした機能素材が積極的に活用された。
帝人フロンティアはレディス衣料で、スポーツとフェミニンの融合をテーマに、帝人の機能素材を使った製品サンプルを充実した。スクエアレースのような外観で通気性と吸汗速乾性に優れた「エアインプレッション」とケミカルレースを組み合わせたドレスや、高撥水素材「ミノテック」のしなやかさと適度なハリ・コシを生かしたクラシックラインのドレスなどを作った。
蝶理は、スポーツ向け主力の合繊・テキスタイル部と連携し、機能素材をファッション衣料に落とし込んだ。機能だけでなく、ラミネートやモノフィラメント、箔加工などの未来的な光沢やオパール加工、カットジャカードの透け感を取り入れながら、スポーティーとモードの融合を狙った。
丸紅ファッションリンクは、「スポーツテイストやユーティリディー感覚に遊び心やポップなムード」を推す。アウター向けは、オーガンディやパラシュートクロス風など、合繊らしい質感や光沢を備えた薄地が中心。洋服のアクセントになるメタリック加工や、2色使いのダブルラッセル、ボンディングの立体的なメッシュ、パステルカラーのジャージーなど、スポーツに着想を得ながら、女性らしさも兼ね備えるテキスタイルを充実した。
2016年(平成28年)7月1日 金曜日 繊研新聞4面